将来の勤務地、業務内容の明示義務で安泰?【メリットとデメリット】

就職する上で勤務地や業務内容は重要な決め手となります。ただ、入社して数年経つと他部署の人手不足を理由に異動をいわれたり、転勤をお願いされることはよくあります。

そこで問題にならぬよう労働条件通知書へ将来の勤務地や業務内容を明示されるようになります。実は労働者側のメリットばかりが目立ちますが、デメリットも存在します。

私は大手企業の採用活動に15年以上携わっている「はれきち」です。明示が義務化される前にどんな点に気を付けるべきか採用側の立場でアドバイスします。

この記事でわかること
  • 明示が義務化される背景
  • 労働者のメリットとデメリット
  • 明示されたからといって絶対ではない
  • 入社後に考えが変わった場合の対処

この記事を読めば、将来にわたって転勤、仕事内容を明示されるようになれば、メリットが増えます。しかし、許容範囲を絞り込みすぎるとキャリア形成の妨げになるだけでなく、面接で不採用となることがわかります。




将来の勤務地、業務内容の明示義務とは

勤務地

事業主(会社)と労働者が雇用契約を結ぶ際は、労働条件通知書が渡されます。労働基準法で法的に決められています。採用直後の勤務地や業務内容が明示されます。

現状:明示されている内容
・勤務時間
・勤務場所
・業務内容
・給与面
・休憩時間
・賃金の締め日及び支払日
・休日/休暇
・退職に関する事項

求人広告や面接で説明した内容に間違いがないか、確認する書類として使われています。もちろん、企業が労働条件通知書と異なって給与を勝手に下げると『違反』になります。

今後は現状の労働条件通知書の内容に加え、将来の勤務地及び業務内容の明示が義務付けられます。

今後:明示される内容
・勤務時間
・勤務場所
・業務内容
・給与面
・休憩時間
・賃金の締め日及び支払日
・休日/休暇
・退職に関する事項
将来の勤務地
将来の業務内容

5年10年先を見越した勤務地及び業務内容を明示されるようになるのは大きな変更です。

明示義務の背景

一体なぜ、予測が難しい将来の勤務地、業務内容を明示されるようになるのでしょうか?

・働き方改革の一環

・労使のトラブル防止

働き方改革

なぜ今なのかといえば、政府が働き方改革を推進しているためです。

働き方改革の一環で、労働者側がもっと働きやすい環境になるよう整備していく流れにあります。すでに改革の一環で、有給消化率の上昇、残業時間の削減、同一労働同一賃金の格差是正が進んでいます。

労使のトラブル防止

入社直後は労働条件は変わりませんが、数年経ったら転勤や部署の異動になる可能性があります。これを理由に辞める人もいますが、労働者側は弱い立場なので、不服でも受けざる得なかったのです。

このように労働者は弱い立場のため、あらかじめ転勤があるのか、業務内容が変わるのか雇用側(会社)が明示しなければならないのです。

はれきち
はれきち

労働基準法は弱い立場の味方なのです

いつから施工されるのか

2022年3月時点では厚生労働省の有識者検討会で方針に盛り込まれました。その後、厚生労働省の審議会を得て、労働基準法の改正となります。

有識者検討会で盛り込まれたので、明示義務が確実視されています。

まだ、いつから施工するかは発表されていませんが、早くて公布が来年で施工は再来年ぐらいかと予想しています。

<施工までのプロセス>

審議会➡閣議決定➡国会成立➡公布➡施工

企業によっては先回りして、将来の勤務地、業務内容を明示することが考えられます。

私の会社では面接時に必ず転勤のあり、なしは必ず確認しています。業務内容も変わることはほとんどないので、こちらの部分を労働条件通知書に盛り込む形になります。

労働者側のメリット

将来の勤務地や業務内容を明示されることで労働者のメリットは大きいです。

  • 安心して働くことができる
  • 人生設計がしやすくなる
  • 転勤や業務変更に意を唱えられる

安心して働くことができる

将来のビジョンを盛り込むことで安心感が得られます。入社直後しか拘束力がなかった労働条件通知書ですが、その先を事前に約束されるのは大きいです。未来を予測して働けるのは安定につながりますからね。

全国展開している会社に就職したならば、『転勤のあり、なし』は大きな悩みです。転勤がないことを保証してくれるなら、この悩みから解放されます。ほんとありがたいですよね。転勤ありなら、どこまでならOKなのか事前に話し合って決められるので心の準備ができます。

また、同様に将来の業務内容を明示されると安心感を得られます。この仕事がしたくて、会社に就職したのに、数年後全く違う業務へ異動となれば、モチベーションが下がってしまいますよね。最悪、退職となりますから。

人生設計がしやすくなる

私は転勤族なので、どこを拠点にして家を購入するのか本当に時間がかかりました。もし転勤なし、あるいは転勤するならどこどこと事前に指定できていたなら、ライフプランが大きく変わっていました。

特に住む場所は妻の職場や夫の職場、実家からの距離などかなり考えますからね。就職する上で勤務地によって住む場所が変わるので重要です。

これから家の購入を考えているなら、どの場所に立てるか早いうちに決断ができます。

家を既に購入していると、もし転勤となれば単身赴任になります。子供が小さいと単身赴任はなおさらしたくないですよね。奥様への負担が大きくなり、夫婦喧嘩が増えますから。

将来、働く場所が決まっているなら、人生設計がしやすくなります。将来の住処を妻の働く会社もしくは夫の働く会社との距離を考えて決めることができます。また、子供の小・中・高校をどこにするか設計しやすくなります。

転勤や業務変更に意を唱えられる

全国展開している企業なら、2週間前に上司から『来月から〇〇に転勤決まったぞ』といきなりいわれることがあります。

こうなったら、会社命令なので従わざる得ないです。ただし、労働条件通知書に事前に将来の勤務地を明示していたら、希望していない地域への転勤はなくなります。仮に上司から言われても、「労働条件通知書に明示しているのでお断りします」といえます。

その他、人事異動により全く異なる部署になることがあります。

私の友人はハウスメーカーの設計がしたくて就職し満足していたのですが、数年後、営業強化を理由に営業部へ異動となってしまいました。営業経験が全くないため、本人は嫌がっていました。結局、辞めてしまいましたが…。

このような場合でも事前に明示されていれば、意を唱えることができるのです。つまり労使トラブルを防ぐことができるのです。

昔は会社命令は絶対でした。会社命令に従わないと退職の道しかありませんでした。でも今は本人の了承や家庭の事情を考慮して、命令する企業が増えています。さらに転勤したくないなら、あらかじめ地域限定社員として採用の流れになっています。

労働者側のデメリット

労働者のデメリット

将来の勤務地や業務内容を明示されるとメリットばかりが目立ちますが、決してそうではありません。自分の要望を強く出したり、許容範囲を狭めるとデメリットが生じます。

デメリットとは
・キャリアアップの妨げになる
・許容範囲を狭くすると不採用になる

キャリアップの妨げになる

書き方によってはキャリアアップの妨げになります。勤務地を最初から絞ったり、業務内容も狭めるとステップアップできなくなります。

例えば、転勤なら「どこでも転勤可能な人」と「勤務地を限定する人」なら、企業側はどちらの人を重宝しますか?

業務内容も「営業、技術、研究開発」と「研究開発だけ」ならどちらがキャリアアップしやすいですか?

出世するには複数の部署を経験することで仕事の幅を広げます。そうすることで、課長、部長とキャリアを積んでいくのです。私も営業や人事と複数部署を経験しています。

勤務地は家庭の事情があるかもしれませんが、業務内容は最初から狭めない方がよいです。

許容範囲を狭くすると不採用になる

そもそも労働条件通知書に明示されるには面接をクリアする必要があります。面接時から将来の勤務地や業務内容を狭くすると不採用になる場合があります。全国展開している企業では全ての人が「転勤なし」を選ぶと適正な人員配置ができなくなります。

合格率を上げるには将来の勤務地もしくは業務内容のどちらかの許容範囲を広げておくとよいです。

>>【就活生必見】希望勤務地を叶える5つのアドバイス【採用者回答】

明示されたからといって絶対ではない

労働条件通知書に将来の勤務地や業務内容が明示されたから向こう30年は安泰と考えてはいけません。

企業側は「あくまでも希望にそうよう考慮する」としか答えられないからです。

日本の人口はこれから減り続けるし、リモートワークがさらに普及すれば社会構造は大きく変化します。そのあおりを食らえば、業種によって閉店や閉鎖はありえます。

例えば、銀行はここ数年で支店を大幅に減らし、統廃合を続けています。そうなると希望する勤務地で働くことができなくなります。デパートも閉店となれば、物理的にその場所で働くことが無理になりますから。

同様にこの業務がしたいと考えていても10年後にはAIに取って代わってるかもしれません。

よって、明示されたからといって、将来の勤務地や業務保証されるものではないことは理解しておきましょう。

入社後に考えが変わった場合の対処

入社後の考えが変わった場合はどうしらよいのでしょうか?やはり、一度、労働条件通知書に明示したことは変えられないのでしょうか。

実はそんなことはありません。

入社後に結婚したり、子供が生まれたり、親の介護が必要になれば状況は一変します。当然、親の介護をすると転勤したくてもできなくなりますからね。

企業はこれらに対処するため、毎年、人事評価をして、転勤の有無や異動についてヒヤリングをします。私の会社では上司と評定面談、人事からのアンケートで確認を取っています。

転勤したくない人を無理やり行かせて、モチベーションが落ちてしまえば、意味がありませんからね。

一方、キャリア形成のために転勤OKとする場合が考えられます。または業務変更して新たにチャレンジしたくなることもあるでしょう。その場合は人事部や上司へ相談すれば、変更は可能です。

はれきち
はれきち

考えは必ず変わるので、毎年確認しています




まとめ

今後、労働条件通知書に現状の勤務地や業務内容の明示だけでなく、将来にわたって明示することが義務化されます。

労働者にとっては人生設計がしやすく、転勤したくないなら、長期にわたり継続されます。全く異なる業務への異動も拒否することが可能になります。もめて辞めることは減るでしょう。

実はメリットばかりではなく、デメリットもあります。面接時に将来の勤務地や業務内容の確認時に、許容範囲を絞りすぎると不採用になる場合があります。

企業としては柔軟性の高い社員が欲しいので、勤務地もしくは業務内容のどちらからは許容範囲を広げることをおすすめします。

社会情勢は刻々と変化します。よって、労働条件通知書に明示されたからといって、将来の勤務地や業務内容が保証されたわけではありません。「なるべく希望にそうよう配慮する」程度と考えておきましょう。

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Posted by はれきち